幻想交響曲はけしからん!1803-1869 断頭台でもなんでももってこい!のベルリオーズ大先生 さて「けしからんクラシック音楽」の栄えある一発目はヘクトル・ベルリオーズ作曲のかの有名な「幻想交響曲」である。 いやはや200年以上に及ぶ長~い交響曲の歴史の中で、この曲ほど不純な曲はちょっと他にない。 この曲のあらすじをごく手短に述べてみると、「繊細すぎる若造が失恋に苦しむあまり阿片を吸って自殺しようとするが死に切れず、その阿片のせいで奇怪な夢を見る」というもの。このストーリだけでもキテレツ千番なのだが、 あんた、この曲の主人公、失恋する若造って自分のことじゃん!! どうやらこの曲は、ベルリーズ自身がアイルランド人女優に猛烈に恋をした体験が下地になっているというのが一般的な話。で、それだけならまだいいが、曲の中身がまたすごいのだ。 三楽章まではまぁ自意識過剰な妄想壁のある若造が恋焦がれる気持ちなどが描かれてまだいいが、第四楽章「断頭台への行進」からいきなり音楽はぶち切れまくり。 なにせこの若造、自分の気持ちが相手の女性に伝わらないことに腹を立て、なんと彼女を殺してしまう。それだけでもすごいが、この楽章の白眉は、捕まって断頭台に一歩一歩進んでいく彼自身とそれを見物する群集のざわめきと罵声を描き、最後にギロチンによって落とされた首が転がるところまで表現されているところ。なんという悪趣味、なんという破廉恥!でもこの楽章がイイんです!! そして圧巻がそれに続く最終楽章「ワルプルギスの夜の夢」。若造の葬儀に死の世界の魔物がどっさり集まり、主人公の死を喜ぶグロテスクな宴会を開き、魔物たちがいつ果てる間のない踊りに興じる。そしてその中には、死んだ彼の意中の女もいるのだった!!音楽は魔物たちの踊りが絶頂に達したところでいきなり終わる。いいのかこんな終わり方で!? 自分の失恋話を曲にするのは良くあるが、その主人公に阿片を吸わせ、ラリったそいつに女を殺させてさらに自分自身も断頭台の露と消える、という破天荒で人間的知性のかけらも感じさせないこのけしから~ん音楽は、しかしなんとベートーヴェンの第九の後たった6年で!書かれたのである。これは奇跡のようなことなのだ。 しかもこの曲は、ティンパニを一度に四つ使用するなどそれまでのオケの規模を一挙に拡大させ、巨大交響曲の曙ともなった作品なのだ。他にも数多くの革新的な工夫が盛り込まれているが、この音響世界の豊穣さに何度聞いても圧倒されてしまうのは私だけではないだろう。 はっきりいってとにかく私はこの曲が大好きだ。もーとにかく「断頭台への行進」がいいんですってば! ラリって足元がおぼつかない自分が、へロヘロになりながら断頭台へ向かっていく・・・周りには悪態をつき、罵詈雑言を浴びせてくる品のない群衆が山となって取り巻いているその様がこれ以上はない旋律で描かれる・・・まるで 自分自身がラリっているようでたまりません。(作者注:私は阿片患者ではありません) いや~本当に、けしからん音楽っていいもんですね!!(水野晴夫風にお読みください) 第二弾は世界中の聴衆を騙しまくったショスタコーヴィチ同志の交響曲第5番、「革命」でも取り上げてみましょうか。 なんと断頭台への行進15連発聴き比べ!けしからん!! ベルリオーズ:「断頭台への行進」15連発!! 初演時の楽器構成を再現した画期的演奏です 【音楽CD】ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14(オリジナル1830年オーケストレーション版) これが今一番のお勧め盤です!素晴らしい!! ベルリオーズ:幻想交響曲|叙情的場面「エルミニー」 ジャンル別一覧
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